1966年 ザ・ビートルズ日本公演裏話~ルーツミュージックを現代の若いバンドに伝える会~

1966年に日本武道館で行われた最初で最後のザ・ビートルズ日本公演。その伝説の公演に関わっていた数少ない生き証人、清水卓治。清⽔が偉⼈たちと共に新たな世代に⾳楽のルーツを残すトーク&ミュージックライブが開催された。
今回のゲストは三世代に渡りドラマーが⼤集合。ブルースとソウルの帝王、つのだ☆ひろ。令和の国⺠的バンドを⽬指す江夏亜祐(バンド・エナツの祟り)。 そして新世代を代表する話題のコスプレイヤー⽕将ロシエル。モデレーターを務めたのは株式会社シミズオクト副社⻑・清⽔佳代⼦。

清⽔佳代⼦:当時の若者にとってビートルズとはどんな存在だったのですか?

清⽔卓治:株式会社シミズオクトはもともと、先代が神宮球場とか後楽園とかスポーツの仕事をしていた。敗戦後は⽶軍第8 軍労働者派遣契約を結んでいて、⽶軍が慰問のために⾊んな芸能⼈を呼んだ。そういう会場の係員をやってたのが始まりです。もともと⾳楽の専⾨ではないんですけど関係していました。

つのだ☆ひろ:⽶軍のそういう場ってすごいんですよ。ジェームス・ブラウンとか、ジミ・ヘンドリックスとか、マリリンモンローとか、それをみれる⽇本⼈っていうのは、本当に数少なかった。

卓治:武道館っていうのは皇居の中、近衛連隊の226事件の本拠地だった場所。もともとオリンピックの柔道のために作られたものなんです。それなのに、オリンピックがおわってから神聖な道場を、ビートルズに貸すとなって…

つのだ:⼤変な論争が起きましたよね。

卓治:ビートルズはすぐ解散しちゃったんで、でも⽇本には、こういうものが使えるってことが知れ渡って、テレビ局やラジオ局がこぞって武道館を使おうとして申し込みが殺到するようになった。

つのだ:もうこの頃⼤変だったんですよ。⽇本の武道の真髄を貸せるかー!って怒鳴って、本当に⼤変なニュースになったんですよ。なんて⼼の狭い、武道っていうのはそんな⼼の狭いものじゃないっていってやりたかったですけどね。⼤変でしたよね批判が。僕もリアルタイムで⾒ていて、⾼校⽣の時だったからビートルズが⽇本に来たのはいいけど、チケットは買えないわけですよ。当時、覚えているのは⻭磨き粉を買って、応募券を何枚かあつめて当たった⼈だけが⼊れるんだよ。何枚か集めて送って親戚にも、もらって・・・はずれましたよ!

江夏亜祐:つのださんはその⻭磨き粉のおかげで⻭が綺麗なんですね?

つのだ:そんなことはない(笑)俺の友達で運良く当たったやつがいるんだけどね。ぼくに内緒で⾏ったらしい。あとで喧嘩になったりしてね。

江夏:ぼくが影響を受けたのはサザンオールスターズ、ミスチル、ユーミン…ビートルズは聞いてなかった世代でしたね。

つのだ:でもね、今⾔った⼈たち、それは全部本当はビートルズに関係あるんだよ。つまりビートルズってどういう⼈たちだったかというと…当時の⾳楽シーンは作詞家、作曲家、編曲家、っていうのが必ずいてその⼈たちが作った楽曲をバンドがうたうっていうのが当たり前のことだったんです。そんな時代に突然、バンドで⾃分たちの曲、⾃分たちの歌詞、⾃分たちがハーモニーをつけて演奏する、っていうかたちで出てきた、⼀番最初がこのビートルズです。だから今ロックバンドの⼈たちが、ビートルズ知らない、関係ないっていっても、結局はあの⼈たちが本当にパイオニアってことなんだよね。

卓治:そうですね。武道館は残念ながら⾳が悪いと⾔われたんですけど。ビートルズをみていちばん驚いたのは、電気ギターを初めて⾒たわけですから。

つのだ:そう、そういうものもどんどん進歩してきて。僕らの頃は返しのモニターなんてのはなかった。外出しのスピーカーだけ。⽇⽐⾕野外⾳楽堂で両側に4本しかなかった。ボリュームも出ない中で鍛えられたわけですよ。そこでドラムでいかにデカイ⾳を出すか。野⾳の⼀番後ろまで叩いた⾳が聞こえなければプロになれないっていう時代でね。おかげでどんどん筋⾁がついていきましたね。

卓治:電気ギター、すごいですよね。

つのだ:それに⾃分たちでハーモニーをつけてるんですから。昔はコーラスが別にいてつけてもらっていたのに素晴らしいですよ、⾃分らのアレンジなんですね、あれは⼤冒険。僕がビートルズから教わったのはなんでもありってこと。ロックだからやっちゃダメとかそんなことは考えてない、彼らはラテンみたいなものを⼊れたり、クラシックを⼊れたり、ありとあらゆるツールを⼀つの⾳楽の中にいれてくる。その新鮮さですよ驚いたのは。次はこんなこと!その次はこんな!って驚きがたくさんあって、やられました失礼しましたって、本当に影響を受けました。

佳代⼦:ロシエルさんはビートルズって知ってますか?

⽕将ロシエル:最初聞いた時、カブトムシの名前かなって思っちゃいました(笑) でも、後からきいて、横断歩道わたるジャケット写真は⾒たことがあって知っていました。

つのだ:⼿をあげて信号を渡ろうっていう交通安全のポスターだよね!

ロシエル:はい、そのポスターみました。

江夏:嘘でしょ!騙されてるよ(笑)でもあれ本当に⻘だったかは気になりますね(笑)

つのだ:年々と受け継がれてる歴史を壊しちゃいけないんだよ。例えば江夏くんはドラムを⾃分でたたくけど、後ろで打ち込みの⾳楽を流してる。クラブなんかいったらドラムも全部打ち込み。何が起きるかというとドラムが叩く⼈がみんな⾷っていけなくなる。冗談じゃないよ。そうすると楽器屋にドラムを置かなくなる、売ってる楽器屋が減っていく、何がおきますか?ドラムメーカーがつぶれますよ。そうやって昔から受け継がれているもの、江⼾の技術もどんどん失われて後継者がいなくなるっていうのと同じ。そんなふうになっちゃダメなんですよ。もうそろそろ考え直したほうがいい。

江夏:ごもっともだと思います。ただ単純に⾳楽に費やす時間とか場所もないのが事実。⾳楽をやるってことは僕らの世代からすると、昔からかもしれないけどお⾦がかかることですよね。

つのだ:お⾦持ちじゃないと⾳楽できないよね。

江夏:特にドラムは、ギターを持つより家に置くのがハードルが⾼い。実家もマンションなんで家におけなかったんですよね。

つのだ:それで、てっとりばやいっていって、電気ドラムを使うんですよね。電気ドラムは電気ドラムであってドラムじゃない。電気ドラムで練習した⼈がドラムやったら⾳が下⼿なんですよ。電気ドラムってどう叩いても同じ⾳が出るんですけど、ドラムってそうじゃない。均等な安定した⾳を出すには相当な練習が必要。Youtube でドラムの技術を発信してる⼈が何万⼈といて、嘘ばっかりいってるのに、⽬から鱗とかコメントを書いてて、こっちが⽬から鱗だよ!だったらなんでうちに⽣徒こないの?って思う。

江夏:途中から宣伝になりましたね(笑)

卓治:40 年ぐらい前に⽐べると⾳楽はすごいハイテクになっている。いわゆる楽器の⾳がどうなのかなって思うよね。同時に歌の歌詞ね。⽇本⼈って、昔から万葉集つくったり、ポエムをつくるのに優れた⼈種というイメージあると思うんですけど。最近の流⾏ってる歌はちょっと歌詞がよくわからないのが多い。

佳代⼦:でも、会⻑はももクロファンですよね?

卓治:そう(笑)ももクロは、LED 画⾯をたくさんつかって、そこに歌詞が出るから⾮常に楽しく⾒れます。

江夏:歌詞出るシステムあると伝えやすいですね。⽇本語っていろんな書き⽅でいろんな表現の仕⽅があるので。⾳だけじゃなくて⽂字で表現できるのが強み。

つのだ:ありがとう。⽇本でいちばん最初にモニターの⼩さいやつをつけて歌詞がずっと流れてるシステムをつくってツアーで使ったのは僕ですよ!当時は映画の歌をよくやってたのでね。

卓治:そういえば今、若い世代では韓流の⾳楽っていうのが⾮常に盛んですよね。国と国との交流ではちょっと今⽇もテレビつけると⾊々起きてますけど、⾳楽の世界では、⽇本の若者が素直に韓流の⾳楽を楽しんでいるみたい。普通に歌えていたり、若者が交流していける。⾳楽はユニバーサルなものですね。

つのだ:今の韓流の⾳楽っていうのは元はアメリカにあって、アメリカ⾳楽の⼤きなパクリを上⼿にしてる。韓国は⽇本より英語教育が進んでるから、コピーもうまくいっている。⽇本の⾳楽は幼稚ですよ。だから若い⼦が韓流に興味をしめすのはわからないわけじゃない。でも、これは本当は⽇本⼈がやるべきことだ ったと思いますよ。つまり、ヒットしてる曲っていうのは海外の真似、劣化コピーをやっている。その劣化コピーを聞いた⼈がその劣化コピーというかたちで、今はもう、その下の下の世代なんですよね。ここでちゃんとしておかないと、次の世代はカスですよ!!だからみんなそれぞれが⾃分がやっている⾳楽にちょっと思いを馳せて、⼼がけることで、いいサイクルが⽣まれると思う。

ロシエル:ドラム始めたのが去年で⼀年もたってないんですけど、今の話をきいて練習だけじゃなくて勉強しなきゃとおもって…弟⼦⼊りさせてください!!

つのだ:そうやって思えるだけ偉いよね。でも、先⽣を⾒極めなきゃいけない、1000学校があったら990は偽物です。ちゃんと教えてくれる⼈に教わらなきゃいけないね。ぼくらは消えていく⼈たちなんですよ。⾔えるのは今だけ。あなたがやらなきゃ何もおきません。それを考えてください、どうしたらいいか。それができれば⽇本の⾳楽は変わっていきます。ダメなものはダメ、パクリは禁⽌。

ロシエル:まずは先⽣探しからはじめて正しいことを学んで正しいことを広めていきたいと思います。

江夏:僕らの世代に託されましたね。


ミュージックライブもあり、 最後には全員で集合写真の撮影も⾏った。

「From Beatles generations to Enatsu generations」〜ルーツミュージックを現代の若いバンドに伝える会〜
2019年8⽉2⽇、⾚⽻ReNY alphaにて開催。

※この記事はBANZAI 2019年10月号に掲載された記事を再掲載したものです。