Relay Column 株式会社スポーツビズ 取締役 鈴木朋彦 

「スポーツで飯なんか食いやがって」

いまから17年前、今の会社に転職した当時はよく言われました。戦後、日本のスポーツは長らく教育と共に発展をしてきたため、指導者や関係者のいわば無償の活動によって支えられてきた面が多々あり、そのような風潮は最近まで色濃く残っていました。本誌をご覧の皆さんも記憶にあると思いますが、基本的に部活は気合と根性。企業スポーツは赤字を出して当たり前。プロ野球は親会社の広告宣伝費。そのようなことが常態化しており、今もその負のスパイラルから抜け出せないスポーツが多いのも事実です。

しかし、この潮目を変える最大のチャンスが2020年の東京オリンピック・パラリンピックです。招致決定から4年、プロ野球は球場一体経営に切り替えて利益を最大化しつつありますし、Jリーグもオンデマンド放送の波に乗って、海外並の放映権料を手にしています。これまでコストでしかなったスポーツが利益の出るもの、つまり産業として成長してきています。その流れを受けて国内では、2025年までに国内スポーツ産業の市場規模を現在の5兆円から15兆円にするという計画が進行しています。

スポーツ産業を成長させる1番のエンジンは、観客動員数の増加だと思います。地域の住民やファンの人々がこぞってアリーナやスタジアムにやってくることで、入場収入・放映権・グッズ販売、ひいては会場広告やチーム協賛など、様々な収益化の機会が増えます。その資金を元手に選手強化や競技普及を行い、ブランド価値を高め、結果的に地域に還元していくという良いスパイラルが生まれるのです。では、いかにして観客を増やすか?協会やチームの悩みはまさにここにあります。

その答えの1つがエンターテイメントであると思います。アーティストやパフォーマーとのコラボレーションを模索することや、会場のエフェクトを駆使して選手の登場や紹介を煽ったり、観客参加型の仕掛けを試みたり。スポーツそのものが持つ感動や興奮には既にものすごい力がありますから、それらを引き出したり更に高めてもらうために、エンターテイメント要素は不可欠だと思います。僕自身スノーボードの大会に大型映像や特殊効果、音楽LIVEを融合させたり、バスケットボールでは選手登場に工夫を凝らしたり、フェンシングをディナーショー形式で開催してみたり。つまり、「非日常」を演出することで来場者を増やすことは有効だと思います。

これからも、「スポーツをチカラに。」世の中を明るく元気にしていきたいと思います。

PLOFILE

鈴木朋彦 | 大手芸能事務所にて複数のアーティストコンサート制作業務を経て、2000年に株式会社スポーツビズに入社。スポーツと音楽をテーマに、東京ドームに初めて雪を降らせたスノーボード国際大会X-TRAIL JAM in TOKYO DOMEをはじめ、山本寛斎『太陽の船』、デニスロッドマンを招聘した日米バスケットボール興行などを制作。スポーツ×エンターテイメントのスタイルでスポーツの魅力の最大化を図る。昨今は国内スポーツ団体のコンサルティングも担当。