寺田農さんと谷村美月さんが活き活き演じる映画『信虎』映画通に堪らない楽しみどころたっぷり! 元気の出る映画

日本映画界に欠かせない名バイプレーヤーである寺田農さんが実に36年ぶりに主演した映画『信虎』。息子・武田信玄から国を追われた信虎が、懐かしの故郷を目指し、武田家存続を物凄い執念で画策する様を寺田さんが活き活きと演じています。さらに平成ガメラ三部作で知られる金子修介監督が珍しくも時代劇を撮ったとあれば、これは映画好きなら気にならない訳はないですよね。話題の映画『信虎』(11月12日より全国公開)の魅力や見どころをご案内します。

映画『信虎』チラシ ©2021 ミヤオビピクチャーズ

どんな映画? あらすじ

武田信玄の父・武田信虎は、信玄に甲斐の国を追放されてから、京で足利将軍に仕えていた。80歳の信虎は信玄の上洛を心待ちにしていたが、信玄が危篤に陥っていることを知る。信虎は信玄が自分を必要していると思い込み、祖国・甲斐への帰国を目指す。やっとの思いでたどり着けるかと思いきや信虎は衝撃の事実を知り、よりによって孫・勝頼と後継争いの様相に。織田信長との決戦にはやる勝頼の暴走を果たして止められるか。そして武田家存続のためにはどうしたら良いのか。老齢の虎・信虎は知略の限りを尽くすのだが!?

見どころは?

見どころはずばり、信虎を楽しそうに演じている寺田農さんです。高齢なのに眼光鋭く一筋縄ではいかず、突如太刀を抜くような怖さもあるものの、家臣には命を託され、強い想いと絶大な情熱で行動し続ける信虎という複雑怪奇な人物を、寺田さんが演じた事により、妖しくもどこか憎めない飄々としたチャーミングさが生まれています。

信虎役の寺田農さん(中央) ©2021 ミヤオビピクチャーズ

信虎役の寺田農さん(中央)

完成披露舞台挨拶でも、粋な佇まいでお茶目かつ鋭いトークを繰り広げた寺田さん。信虎の出演オファーが来た時の気持ちを「長生きするもんだね」とご機嫌で語っていました。

ちなみに寺田さんを口説いたのは金子監督で「寺田さんなら、何かやらかしかねない危なさがあるのが信虎に合っている。それに色気もある」という理由だったそう。寺田さんは「最高のほめ言葉だよね」と引き受けたそうです。

“生涯不良”を標榜する寺田さんは現在79歳(撮影時は77歳)。いつもぴちぴちのお刺身のようにフレッシュな現役俳優でありたいと思っているそうで、まさに本作で活き活きと演じきっています。

完成披露舞台挨拶にて。寺田農さん(右)、左伴彩佳さん(AKB48、左)

完成披露舞台挨拶にて。左伴彩佳さん(AKB48、左)、寺田農さん(右)

映画通であればあるほど楽しめる!

映画通に堪らない要素にもあふれています。寺田農さんと言えば、ジブリアニメ『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐の声優で知られていますが、思わずニヤリとする台詞があったりもします。

また、映画『天と地と』(1990)で上杉謙信を演じた榎木孝明さんは、またも上杉謙信を演じる事になり身震いしたそうです。

上杉謙信役の榎木孝明さん

撮影は『天と地と』にも携わった上野彰吾さん。美しいショットが際立っています。さらに実際に上杉謙信の子孫である長尾卓磨さんが、謙信の養子の長尾顕景を演じています。

また黒澤明監督の『影武者』(1980)の織田信長役で鮮烈にデビューした隆 大介さんが、本作でも壮絶な演技を披露しています。残念ながら本作が遺作となってしまい、隆 大介さんに本作は捧げられています。

矢作勘太夫役:森本のぶさん(左)、土屋伝助役:隆大介さん(中央左)、武田信虎役:寺田農さん(中央右)、清水式部丞役:伊藤洋三郎さん(右)

矢作勘太夫役:森本のぶさん(左)、土屋伝助役:隆大介さん(中央左)、武田信虎役:寺田農さん(中央右)、清水式部丞役:伊藤洋三郎さん(右)

重厚な音楽は『影武者』も手掛けた池辺 晋一郎さん。金子修介監督は『信虎』の撮影中、ずっと頭の中で大好きな『影武者』のテーマが流れていたそうです。このように映画通であればあるほど楽しみどころの多い映画となっています。

魅力的なキャラクターたち

アイドルや女優を魅力的に描く事に長けている金子修介監督の手腕で、それぞれのキャラクターの魅力が引き出されています。凄惨な戦国時代を描いているにも関わらず、ほっこりとしたユーモアあり、キュートな映画に仕上がっているのは明らかに金子監督の持ち味でしょう。

そして、いつの世も時代に翻弄され苦労する女性たちの姿も描かれています。そんな中でも谷村美月さんは現代的視点のお姫様・お直役を演じていて、きっと共感する女性も多いのでは。

信長の末娘・お直役の谷村美月さん(中央)、お付き役の花澄さん(右)

信長の末娘・お直役の谷村美月さん(中央)、お付き役の花澄さん(右)

左伴彩佳さん(AKB48)はお弌(いち)役。初の映画出演ながら、武田家・花菱紋の豪華な金襴の着物を纏い、時代劇に馴染んで華やかさを添えています。

完成披露舞台挨拶でも初めての映画出演が本格派の時代劇だった事について「貴重な着物を汚してしまわないか心配で何も食べれなかった」と語っていました。

完成披露舞台挨拶にて。左伴彩佳さん(AKB48)

完成披露舞台挨拶にて。左伴彩佳さん(AKB48)

イケメンが多すぎるのも堪りません。谷村美月さん演じるお直に微笑みかける矢野聖人さん(側近・黒川新助役)にキュンとしない女性はいないでしょう。

お直役・谷村美月さん(左)と黒川新助役の矢野聖人さん(右)

お直役・谷村美月さん(左)と黒川新助役の矢野聖人さん(右)

信玄の後継を信虎と争う孫・武田勝頼役の荒井敦史さんは、若さゆえの荒々しさや危うさを演じています。初日舞台挨拶で金子修介監督が「最強の勝頼! 所作が素晴らしい」と絶賛していました。

武田勝頼役の荒井敦史さん

武田勝頼役の荒井敦史さん

武田信玄の肖像画にそっくりの永島敏行さんは武田逍遥軒との2役を演じ分けています。武田逍遥軒は武田信玄の弟で、信玄の“影武者”を務めたぐらい似ていたそうです。

武田信玄役・武田逍遥軒役の永島敏行さん

武田信玄役・武田逍遥軒役の永島敏行さん

武田家に立ちはだかる、怖すぎる織田信長役に渡辺裕之さん。迫力の演技です。

織田信長役の渡辺裕之さん(左)

織田信長役の渡辺裕之さん(左)

物語の語り部・ 柳澤保明(吉保)役に柏原収史さん。謎めいた役柄を演じています。

柳澤保明(吉保)役の柏原収史さん(左)

柳澤保明(吉保)役の柏原収史さん(左)

伊達だけど厭味ったらしい一条信龍役は杉浦太陽さん。さらに勝頼の癖ある寵臣に堀内正美さんがまた堪らないお声と存在感です。イケメンからイケオジまで幅広く揃って魅力を放っています。

特にオススメは?

加えて、子役たちとお猿の可愛さは特筆ものです。特に子役・高月雪乃介くんは、なんと寺田さん相手に重要な内容を伝えなければならない難しい役どころを堂々と務めていて、二人芝居で長丁場なのです。そのやりとりにぞくぞくし、とても魅せられます。

武田平太郎役の高月雪之介くん(左)、武田信虎役の寺田農さん(右)

武田平太郎役の高月雪之介くん(左)、武田信虎役の寺田農さん(右)

また、当時のお料理もよく再現されていて、それを美味しそうに食べる様子も堪りません。

武田平太郎役の高月雪之介くん

武田平太郎役の高月雪之介くん

そして信虎が実際に飼っていた猿の勿来(なこそ)役を演じたのは、こころちゃん。こちらも可愛らしく名演技なので注目です。撮影現場の笑顔を生む存在だったようです。

こだわりをあきらない

このようにキャラクターを魅力的に描くのに長けた金子監督ですが、信虎の異様さはガメラかのようですし、当時の慣習にも現代的な視点を差し射れて、新感覚の時代劇となっています。

さらに、生粋のオタク監督として知られる金子修介監督と、歴史美術研究家の宮下玄覇共同監督のタッグで、並々ならぬこだわりが随所にあふれているのです。

ロケセットではなく歴史あるお寺などで撮影し、床の軋む音にも風格が漂います。茶器や甲冑や美術品も極力当時のものに近づけるために数百年前のものが使用されており、所作・音などのディティールも徹底的に追及したそうです。

さらに特殊メイクやVFXなど最新鋭の技術が使用されており、本物と現代が融合しています。

これは裏方さんも相当大変でしたでしょうね。どんな映画製作現場でも困難があるでしょうが、より一層のこだわりと困難を乗り越え成し遂げた結実が、この映画の奥行と説得力となっているのでしょう。鑑賞という言葉に相応しい美しさになっています。

戦国時代という困難な時代を生き抜き、齢80歳を超えてなおも武田家の存続にこだわり、あきらめない信虎。そして79歳現役俳優として活き活き楽しそうに演じきる寺田実さん。コロナ禍からの復活を目指す私たちに映画『信虎』はきっと元気を与えてくれるに違いありません。必見の一作です!

映画『信虎』予告編

2021年11月12日(金)よりTOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ梅田 ほかで全国公開

映画『信虎』公式サイト

https://nobutora.ayapro.ne.jp/

監督:金子修介
共同監督・脚本・美術・装飾・編集・時代考証・キャスティング:宮下玄覇
プロデューサー:西田宣善
音楽:池辺晋一郎
撮影:上野彰吾
2021年/日本/135分 PG-12

場面写真は全て ©2021 ミヤオビピクチャーズ


Author:Nori Shinozaki(イベントマガジンBANZAI編集長)