式 紗彩メジャー1stミニアルバム「Butterfly Attack」が放たれるまで

2018年1月24日に『Butterfly Attack』でメジャーデビューを果たす式 紗彩。「数学×音楽×アニメ」というキャッチコピーを見て、どんなぶっ飛んだリケジョだろう? と、正直オソレオノノイテいたが、実際会った彼女は、なんとも清楚で奥ゆかしく、かつ、やわらかな率直さを持った人だった。音楽やアニメを必要とした思春期の蹉跌、艶やかなハイトーンを会得した驚きの経緯、数学への愛と音楽との両立など、オリジナリティだらけのそのキャラクターに今回は迫った。

Photo:佐藤哲郎 Text:藤井美保

 

──まず、プロフィール的なところから伺わせてください。現在「数学」を専攻している大学院生ということで?
はい。グラフ理論を研究しています。数学でもマイナーな分野ですけど(笑)。

──平易に解説していただけますか?
たとえば、マグカップとドーナツがあるとします。マグカップの把手にも、ドーナツにも穴がある。だから同じカタチと考えて、なぜかを解き明かしていく、というような。

──数式で、ですか?
いえ、グラフ理論ではあまり数字は使わないんです。証明の分野なので、ひたすら紙に言葉を書いて格闘しています。

──数学を愛するその理由というのは?
生まれた国や育った環境によって、人にはある固定観念や偏見が生まれがちですけど、数学にはそれが通用しないんですね。絶対的に正しいものを追求していく学問なので、どこの国の誰であろうと数学で証明されたものを覆すことはできない。逆に言うと、世界中の人と同じ目線で語ることができる。そこが数学の素敵なところだなと。

──そんなリケジョでありながら、水泳のオリンピック強化選手でもあったとか?
小さい頃オリンピックを見て水泳選手になりたいと言ったらしく、3歳から始めて、学校に入ってからも放課後は遊ぶことなくずっと打ち込んでいました。得意種目は800m自由形。中学のときタイムが東京で1番だったので、招集されて合宿などにも参加してたんです。でも、中学できっぱりやめました。

──えっ ! それはなぜですか?
毎日のように辛い練習をしていくなかで、オリンピックに仮に出場できたとしても、その先に私が求めているものが無いことに気づいてしまって。もしかすると、本当にやりたいことは違うんじゃないかって。

──趣味で泳ぐことも?
ないですね。もう一生分泳いだからいいやって(笑)。

──やめてどんな変化がありましたか?
自由になったと思ったのは束の間、それまで『水泳の早い子』だったのに、やめたら何にもなくなってしまいました。目標もなくダラダラすごすうちに、『私って何だろう? 何のために生きてるんだろう?』と思うようにもなって。ただ、音楽やアニメに触れる時間はできたんです。それで、すっかりハマってしまいました。何もなくても、カッコ悪くても、そのまんまで生きてるってことが重要なんだ、と、教えてくれた気がして。

──音楽やアニメの力を実感したんですね。
はい。自分と同じように悩んでる人たちに、私もいつか、今はそれでいいんだよ、未来は希望に満ちてるよ、と伝えられる人になりたいと思い始めました。

──自分から音楽を始めたのは?
最初は音楽に関わることを何か習いたくて、歌を始めたんです。そのうち『歌うんならやっぱり自作曲でしょ』と人に言われて、曲作りにも挑戦するようになりました。

──それはいつ頃ですか?
大学生になってからです。本当にまったくの独学なので、最初は歌いこなせないような難解な曲を作ったりもしてて(笑)。

──曲作りするとき、楽器は何を?
ピアノです。幼少期に習っていたときは嫌いでしたけど、今はすごく役立ってます。

──自作曲をもって何か具体的な活動も?
月に1本くらいのペースでブッキングライブに出たり、オーディションを受けたりはしてました。DTMが少しできるので、自分で作ったクオリティの低いオケをバックに。常に母の姿しかないってくらいお客さんがいなかったので、今思えばなんでやれてたんだろうと(笑)。でも、あの経験があって今があるんだなと思います。

──作品を聴いたとき、式さんの歌声がファルセットを強くしたものに思えたんですね。
そうなんです ! 実は地声はほぼ使ってなくて。

──相当訓練されたんですか?
そう教えられたことはなくて、どういうわけかファルセットを強く出すのが世の中の主流だと勘違いしてたんですね(笑)。ある時お風呂で練習してたら、ファルセットが強く当たるポイントを発見して、『コレだ!』と(笑)。そこからそればかりを練習してました。当時の歌の先生は、それが地声だと思ってたみたいで。

──独自に開発した声なんですね。
みたいです(笑)。練習するうちに、ファルセットで低い音域まで出せるようになりました。3、4年経った頃、別の先生が『あれ ? 地声じゃないんだね』と初めて気づいてくれて、そこで私も『えっ、これって地声じゃないんだ?』と(笑)。

──無意識のうちの開発だったとは!
『合唱部だったの?』とよく言われたりしますけど、今となってはそれも個性かなと。

 

ミニコーナー
私とリンクする4つのもの


「数学」「アニメ」「音楽」異なる世界が1点に交わる瞬間

音楽シーンに新しい旋風を

──隠し球として地声があるわけですから、まだまだ開発は続きそうですね(笑)。では、メジャーデビュー作『Butterfly Attack』の話にいきましょう。ズバリ、タイトルの由来は?
今回は、音楽で数学の面白さを伝えるというテーマもあったので、やはり数学的な言葉をタイトルにもってきたかったんです。それで、思いついたのが『バタフライ・エフェクト』。蝶のひと羽ばたきが地球の裏側で竜巻を起こすという理論です。私が始めることも、そんなふうにいつか世界中を巻き込むものになればいいなと。その願いもこめて、『エフェクト』よりもっと能動的な『アタック』という言葉を使いました。

──意欲の波動が伝わって、各曲ともたしかに数学愛に溢れてますね。ということで、1曲1曲辿っていきましょう。リード曲「君にしか導けない方程式」は、歌詞完成まで相当な試行錯誤があったとか。
この曲は、数学をからめて書いた歌詞の第一号です。なので、自分が納得できるまでとことん悩み抜きました。数学的な言葉をただ並べただけでは意味がないし、意味を伝えたいがために難しい言い回しになったら、歌として成立しなくなってしまうし。

──数学と歌を両立させるための微妙なさじ加減が必要だったわけですね。
そうなんです。友だちやスタッフさんに、聴き取れるか、意味が伝わるか、率直な感想を尋ねつつ、締め切りギリギリまで粘って完成させました。

──「エルゴードと蝶」は、「エルゴード仮説」を元にしたものとか?
日々生きていると期せずして被るヤなことってありますよね。いわゆる『運が悪い』ってヤツ。私自身にも今日、電車が遅れるというヤなことがありました。でも、確率で考えると、今日起きたことは明日起こりにくい。だから、ヤなことがあってもいちいち気を落とさず、自分で選んだ道を信じて生きていけばいい。そんなことを歌っています。

──「エルゴード仮説」は初耳だったので、実は私なりに必死に調べてなんとか理解もしました。数学って哲学でもあるんだなと思ったんですよ。
ワーッ ! そういうふうに私の曲を聴いていただけたら一番うれしいです。

──ダークな曲調のせいか、歌声に式さんの強さや覚悟がこめられてる気がしました。
曲を作り始めた頃、実はこういうダークな曲ばかり作ってたので、母も『すごくあなたっぽいわね』と言ってました。自分でもテンション高く取り組んだ曲だったので、その気合が声に出たのかもしれません。

──「Eter nal  Love 2017-prime number-」は、飯島真理さんの「Eter nal Love〜光の天使より〜」のカバー。4つ打ちのカッコいい曲ですね。
作曲/アレンジをされた坂本裕介さんと今一緒にお仕事をさせていただいてるご縁で巡り会った曲です。聴いた瞬間引き込まれてしまい、ぜひにと思いました。これまで歌ってこなかった曲調なので、歌入れも楽しかったです。ちなみに、この曲でだけ普段使わない地声を使ってます。

──「180°」は、6時間耐久リレーマラソン「味スタ6耐」の公式テーマソングでもありましたね。
実はこのイベントにインスピレーションを受けて作りました。たすきを繋ぐ6時間で時計の短針は180°先に進む。曲中の『180°向こうの世界を見に行こう』というキーワードは、まさにそこから浮かびました。人と人との繋がりの大切さを伝えたい。そんな想いをリズム感のあるメロディーに乗せた、前向きになれる曲になっています。

──「さよなら素数」は本格的なバラード。素数って何だっけと思いつつ「3、5、7、9・・・」と紙に書きましたよ(笑)。
ありがとうございます。これは23歳から24歳になるときに作った曲なんです。素数である23とはお別れだけど、次にまた29で素数に会える。幸せって有限だから、終わりが来ると思うと悲しいけど、たとえ終わっても次にまた幸せはやってくる。という意味合いを重ねているんです。

──個人的に大好きなのが「エビフライの尻尾(Long ver.)」。すごく頷ける歌詞です。
ツイキャス配信で『私、エビフライの尻尾が好きなんだよね』と話したら、リスナーの方から『エビフライの尻尾って曲作って ! 』という声が上がって、初めは軽〜い気持ちで作りました。LIVEでも『好き ! 』と言ってくださる方が多くて、今回特別にロングverを作ることになりました。

──この6曲、みなさんにどんなふうに聴いていただきたいですか?
ぜひ通勤、通学のお供に ! みなさんの明日への活力になれたら本望です。数学の楽しさもつめこみましたが、ひとまずそれは置いといて(笑)、構えずに楽しんでいただきたいと思います。

──聴く、から派生して、みなさんが調べたり、思考してくださったら素敵ですね。さて、1月25日には渋谷eggmanでリリースイベントが行われます。文字通り『バタフライアタック』になりそうですか?
もう、すべてを賭けて挑みます。式 紗彩の最初の羽ばたき=アタックを、ぜひ目撃しに来てください!

 

メロディはいわば順列組み合わせのハプニング。歌詞は「証明」と同じく言葉との格闘。つまり、音楽と数学は意外と近いものなのだと気づかされた。訳あって両者への愛を綾織る式 紗彩のポップスは、その訳の分だけ誰かの憂鬱を抱きしめる。生命力に満ちた新種の歌姫。その瞳に見たことのない未来が宿っていた。

 

こんな音楽を聴く人に式 紗彩がハマる!

式 紗彩自身がインスピレーションを受けた音楽や、彼女の世界観に近い
アーティストを3組ご紹介!

UVERworld
彼女自身が語るに、彼らのメロディーラインに大きな影響を受けているという。今作では、1曲めの「君にしか導けない方程式」が、一番メロディックな作品になっているため、要チェックだ。

miwa
式 紗彩を象徴する魅惑的な歌声は、miwaの声質に近いものを感じ、きれいな高音が印象的。特に4曲めの「180°」はポジティブな応援ソングで、彼女らしい明るくポップな楽曲となっている。

いきものがかり
楽曲全体に言えることだが、1曲1曲に温かみがある部分が、いきものがかりを彷彿させる。最後6曲めの「エビフライの尻尾」では、みんなで歌えるようなキャッチ―な仕上がりでファンにも好評。

 

FIRST MINI ALBUM
Butterfly Attack


2018年1月24日(水) Release 
QAAQ-10001 ¥1,667(税別)

 

LIVE INFO

1月25日(木)渋谷eggman
レコ発ワンマンライブ「バタフライアタック」
時間:OPEN 18:00 START 19:00 料金:¥2,000+1D

1月28日(日)タワーレコード横浜ビブレ店
インストアイベント「1st mini album Butterfly Attack』 発売記念ミニライブ」
時間:START 18:00 

 

PROFILE

式 紗彩(しき・さあや)│ 1993年3月13日生まれ、東京都出身。リケジョ・シンガーソングライターとして、彼女にしか表現できない詩を特徴的なハイトーンボイスに乗せて歌う唄は、多くの人に反響を呼んでいる。そして今年1月、満を持して1stミニアルバム「Butterfly Attack」を持ってメジャーデビュー。

 

Twitter /Instagram  @saaya_shiki