仕事の流儀 株式会社フェイス取締役副社長 最高執行責任者COO 吉田眞市

FEATURE

株式会社フェイス

取締役副社長 最高執行責任者COO

吉田眞市

その道のプロが切り開く“仕事の流儀”。
今回は、音楽ビジネス界の先頭に立ち続ける
株式会社フェイス取締役副社長、兼日本コロムビア株式会社取締役副会長、
株式会社ドリーミュージック取締役副会長である、吉田眞市氏にお話を伺った。

 

人との繋がりを基盤に、
音楽業界の新たな道筋を切り開いていきたい

 

――昨年8月に日本コロムビアの社長から親会社であるフェイスの副社長に就任されましたね。

株式交換によって、昨年8月からコロムビアは、フェイスの100%子会社となりました。私はそのタイミングでフェイスの副社長に就任しました。コロムビアに関しては阿部新社長を立てて、新体制でスタートしましたね。ただグループ全体を見渡すと、これまでの立場と、中身の部分ではあまり変わっていない状況です。引き続き、コロムビアの事業もそうですが、もうひとつの子会社であるドリーミュージックも昨年3月からグループ化しているので、このレーベル2社を継続して総括しています。

――フェイス・グループですが、簡単に説明するとどういった会社でしょうか。

個々に見ると色々なサービスが広がっているのですが、インターネットによる音楽コンテンツの流通において、必要不可欠なプラットフォームを創るのがフェイスの主な事業内容です。ただし、コンテンツが無ければプラットフォームを活かすことができないので、プラットフォームとコンテンツの両面から事業を拡げているのが、今のフェイス・グループです。一部教育や医療系のサービス等も行っていますが、圧倒的に音楽を中心としたエンターテインメント領域でサービスの展開を拡げています。

――たくさんの社長経験を積まれていますが、吉田さんが持たれている経営理念というものはなんでしょうか。また、ご自身のエンターテインメント領域での夢をお聞かせください。

経営理念的な所で言うと、どういった組織体であれ私が心がけていることは、一人でやれることには限界があり、また一つの会社でやれることにも限界があるという意識を持ちながら、いかにグループ内で良いチームを組んでいくか、外部の会社ともどういう座組みができるか、という部分を意識することがすごく重要だと思っています。それぞれの役割はあると思いますが、いろんな得意分野を持った人を集めて来てどうやって事業展開していくのかが重要ですし、最終的にはやはり人に行き着くのではないかと思います。信頼関係があり、役割分担も見えて来ることで、お互いがそれぞれのことをリスペクトしながら実行できるかどうかが、とても重要だと思っています。エンターテインメント業界には15年ほど携わってきましたが、やはりそこに関わる人間、アーティストをはじめとしたクリエーターだったり、そのコンテンツを楽しむユーザーであったり、それらのサービスを仲介している会社など、それぞれが楽しみながらメリットを追求し、創り上げていくのがエンターテインメントだと思いますね。関わる人みんなをハッピーにできるような仕組みの中で、コンテンツやアーティストを創り上げていきたいと考えています。


すべての職種において共通する 仕事への姿勢

――元々伊藤忠商事の商社マンから、いきなりアニメ系の制作会社である株式会社ブロッコリーの社長になったことが大きな転機だったと思うのですが、畑がまったく違いましたよね。

元々エンターテインメントの世界には大きな関心を抱いていましたが、あくまでもユーザーとしてです。経営という目線で、自分が活躍できる場を探していた時に、たまたま出逢ったのがブロッコリーでした。

――エンターテインメントの中でもコアなマーケットですよね。

入る前からも、今でも、業界や扱う商品が変化したとしても、やるべきことや大事にすべきことの原点はあまり変わらないなと思っています。最終的には人と人、会社と会社ですし、それぞれの分野で必要な人材や技術を集めてくることが大事なんです。そういう意味では、今まで経験をしたことのない業界でどれだけやれるかを自分自身見てみたかったというところもありますね。いざ飛び込んでみるといろいろ苦労はありましたけど、仕事に対する姿勢は、あまり間違ってはいなかったと思います。なので、ブロッコリー時代の経験って、今の仕事に活きていると思います。たとえば自動車業界や他の産業にしたって、それぞれの所には非常にコアなファンがいらして、やはりコアファンの皆さんに納得して喜んでいただくための商品を創り上げるには、念には念を入れて創り込まなければいけない。コンテンツ業界においては、良い作品を創っていくことで、コアなファンが生まれ、そのファンの皆さんから大きく拡散いただいてマスになっていく。たとえばAKB48もそうですが、スタートは秋葉原の小劇場からスタートしています。そこでいかにコアファンを作り、そこからどのように世の中(マス)へ拡散していくのか。コアファンの中だけでマーケットを拡げるのか、マスに向けて拡がるモードにするかの違いなだけです。そういった部分では、ブロッコリーでは、コアファンを創り拡げていくためのコンテンツ創りの部分で良い経験を積むことができましたし、今の音楽ビジネスで活かされていると思いますね。

ライブ・イベント業界が担う 日本の音楽業界の可能性

――当時ブロッコリーはライブやイベントにかなり力を入れていましたよね。吉田さん自身、これまで特に印象に残っているライブ・イベントはなんでしょうか。

一番はBROCCOLI THE LIVEを横浜アリーナで開催したことです。声優さんのイベントでアリーナを埋めるということは今では普通のことですが、ブロッコリーに入ったばかりの当時は挑戦的なことでしたし、現在の声優市場のフロンティア的な役割を果たしたと思います。この業界で、ここまで大きなイベントが開催できたということにすごく感動しました。正直な話、制作側としては大変でしたが、その時に集まってくれたお客様、声優さん、制作サイドの方々が一体となって、会場を満員にすることができて感極まったのを覚えています。
今でも様々なジャンルのコンサートには良く足を運びますが、歌い手さんのエネルギーには大きなパワーをいただくことがあります。特にコロムビアの氷川きよしさんや細川たかしさんなどのコンサートを拝見すると、やっぱり生で聴く圧倒的な歌唱力にはテレビやCDでは体験することのできない感動がありますね。コンサートでのこの感動をファンの皆さんにはもちろんですが、若い人たちにもぜひ生で聴いていただきたいと思いますね。

――フェイスはITを駆使した音楽サービスを行っている企業というイメージを持ちますが、リアルなライブ・イベントに対して、今後取り組みなどはありますか。

全体的な音楽業界の話で言いますと、CDなどの媒体が無くてもインターネットで簡単に音源が聴けるような時代になりつつある反面、ライブ・コンサート業界はどんどん盛り上がってきていてマーケット規模も急成長してきています。WEBが便利になって音源を手に入れるハードルが低くなればなるほど、反作用でリアルなものやコピーできないもの、簡単に手に入らないものは相対的に価値が上昇するのでしょう。そういう意味でいうとネットの世界とリアルなところのサービスは相互作用というか関連し合いながら今後も大きく成長を続けていくと思います。ネットの中のサービスを得意にしてきたフェイスですが、リアルな場とどういう風に連携してサービスを展開してくかということは、すごく重要なことであると思っています。ライブ業界に私たちが提供できるサービスを現在構築していますし、コロムビアやドリーミュージックは自社で興行的事業も行っています。フェイスでもライブ・コンサート業界における展開は今後の大きな課題だと思っています。


多様化するプラットフォームを活用した 未来の音楽プロモーション

――コロムビアは日本最初のレコード会社で、とても歴史がある会社なのですが、反面、ITを主とするフェイスにとっては、なにか改革しなければいけない点などもあったのではないでしょうか。

会社として目指しているようなビジョンはありますが、まだ道半ばのところがあります。やはりもともとフェイスとコロムビアの背負っている歴史も企業文化も違いますし、ビジネスラインも異なります。同じ音楽を切り口にしていますが、そういう意味ではこの違いは大きいものでした。ただ、その違いが大きいからこそ、グループとして一緒にやっている意義があるので、それぞれが持っている強みが一体になったときに、今後どういったサービスを実現できるのかが非常に重要な部分であると思います。コロムビアには、過去の原盤や管理楽曲などのアーカイブの保有という圧倒的な強みがあります。この財産をアナログだけで活かすのは限界がありますので、今後はデジタル的に再活用して行かなければいけないと思います。既に手は付け始めていますが、アナログだけでなくデジタルの多様な技術を使って展開して行くことで、お互いの強みが生かされると思います。現役のアーティストにしても、従来型のプロモーションだけではなく、WEBを有効活用し、どのようなサービスを立体的に展開をしていくか。この部分は今後の音楽業界において凄く重要なピースになって行くと考えられるので、引き続きしっかり行いつつ、インターネットを活用したプロモーションをいかにサポートするか。今までコロムビア単体だけでは厳しかったことをフェイス・グループ全体が持っている様々なツール、ソリューションを使うことで実現可能になりますし、スピードも上がると思いますね。

――国内だけでなく、海外も視野に入れて展開されてますよね。

もちろん海外へ日本の良質なコンテンツを展開していくということも目指しています。ただし、海外展開だけに言えることではないですが、作品プロデュース自体の難易度が年々上がって来ていると思います。これまでは、音楽は音楽の世界観の中でどうプロデュースするかを中心に考えればよかったのですが、今は音楽のみならず他のエンターテインメントのジャンルとどうリンクして、どのようなインパクトのあるプロデュースをするかが重要になって来ている状況にあると思います。場合によっては他の産業ともどう組み合わせていくか。そういう意味ではコンテンツにおけるプロデュース範囲が拡大しているなと思いますね。海外に出ていく場合も同様で、音楽作品だけであったり、アーティストのコンサートだけというような単体ではなく、プラスαとしてアニメやゲームと組んで展開するなど、トータルプロデュースが上手くできないと海外でのコンテンツ勝負は難しいと思います。マーケットのエリアや動員も考慮し、そこに向けて今までとは違う、新しい手法で発信して行くことが大切だと思いますね。

――音楽で成功したいと思ってる人が今もたくさんいると思いますが、フェイス・グループを代表して一言お願いします。

シンプルに言うと、一緒にがんばりましょう!この一言につきますね(笑)。これは私たちの責任として考えているのですが、これまではアーティストが育っていくなかにはプロセスがあったんですね。インディーズとして活動をするなかでCDを手売りして、そのうちメジャーでCDを発売するようになり、CDが売れた枚数の段階ごとに成長していくみたいな階段があったかと思うのです。しかし今はパッケージの売上がどんどん少なくなってきて、アーティストの登って行く階段が無くなっている状態なんです。ですから私たちがCDだけに頼らないようなライブシーンを含めた新たな階段をもう一回創っていかなければならないと思うんです。アーティストが夢を持って頑張れる環境を再度構築し、才能あるアーティストが活躍できるような音楽業界をこれからも創っていきたいと思います。

株式会社フェイスは、創業25周年を記念して「フェイス25周年特設サイト」を開設。スペシャル対談コンテンツやフェイス・グループ25年の歩みなどを掲載している。
25周年特設サイト:www.faith.co.jp/25th

フェイス・グループの日本コロムビア所属アーティストである04 Limited Sazabysが、地元名古屋にて主催する野外フェス『YON FES』の次回開催が2018年4月7日(土)・8日(日)に決定。今回で3回目の開催となる。

フェイス・グループのショールーム、「Future SEVEN」。「Made in Japan, again」をテーマに、日本のエンターテインメントを世界に発信している。
港区南青山6-10-12 フェイス南青山1F
http://future7.jp/ Tel:03-6861-7777


吉田眞市(よしだ・しんいち) PROFILE

大学卒業後、伊藤忠商事に入社。2003年ブロッコリーに転じ社長などを歴任。2009年よりフェイス・グループに参画しフェイス・ワンダワークス社長、2010年ウェブマネー社長を務めた後、2015年に日本コロムビア社長に就任。2017年8月、フェイスによる日本コロムビア100%子会社化を機に、フェイス副社長 最高執行責任者に就任、日本コロムビア副会長、ドリーミュージック副会長を兼任する。日本レコード協会理事。