清水太郎が見た、リオデジャネイロオリンピックの実際

数々のアイデアによって、大成功に終了したリオオリンピック

イベントに携わる全ての道のプロフェッショナルが揃った会社、シミズオクトの代表取締役社長である清水太郎氏が、2016年に行われたリオデジャネイロオリンピックの視察を行い、現地で見たオリンピックの実際について、東京富士大学の学生に向け講義を行った。

最新のスポーツビジネスのトレンドは、現場に行ってみないと分からないことが多いため、オリンピックやワールドカップが行われる際にはシミズオクトからも視察団を組み、どういう運営や演出が行われているかを視察することにしています。今回は、開会式を含めた前半、閉会式を含めた後半を2チームでそれぞれ視察に行って参りました。

 

サッカーの聖地である、メイン会場のマラカナンスタジアム

リオオリンピックは、マラカナン地区、コパカバーナ地区、デオドロ地区、バッハ地区という4つの地区を中心として開催されました。メイン会場となったマラカナンスタジアムは、収容人数約8万人の非常に大きなスタジアムです。1950年と2014年のFIFAワールドカップの決勝戦が行われたほか、数々のサッカーのビッグマッチが行われ、サッカーファンにとっては聖地と呼ばれている場所です。こちらで、サッカーの試合と開会式・閉会式が行われました。
私は女子サッカーの試合を観に行ったのですが、ブラジル人にとってサッカーというのは国民的スポーツなので、日本と比べても、観客の熱気や応援のレベルがケタ違いに高くて熱いと感じました。会場内には、ボランティアの方が要所に配置されているだけで、日本のように警備員が等間隔に立っているというわけではなかったので、本来は全席指定なのですが、結果的に観客の皆さんは席と関係なく、自由なところで観戦をしている、という状況でした。

 

仮設を最大限に生かした、リオオリンピックの会場

今回のオリンピックでは、マラカナンスタジアムをオリンピックに合わせた仕様にするため、仮設の階段や客席といった仮設物が上手く使われていました。仮設会場の例ですが、ビーチバレーの会場は、砂浜の上に1万2,000人の客席を持つビーチバレー会場が造られていました。ビーチバレーのコート自体を取り囲むように客席のスタンドが建てられており、極限まで仮設を活かして作ろうという思想が見受けられました。東京オリンピック・パラリンピックに関しても、例えば有明地区にプールを2つ作るという話もありますが、巨大なプールが2つも必要か、オリンピック以後の活用を考えたときに、5,000席や10,000席といった座席数が本当に必要なのかということは、大いに議論して考えるべきだと思うんです。仮設を上手く使い会場を整備していくことが、費用縮小の一つのカギになるのではないかと思っています。

 

クールジャパンを世界中にアピールした、大好評の閉会式

オリンピックの閉会式には「フラッグハンドオーバーセレモニー」(引き継ぎ式)があり、次回のオリンピック開催国が8分間のプロモーションをする、という時間を設けることになっています。皆さんご覧になったかと思いますが、東京でスーパーマリオが土管をくぐって地球の反対側に行くと、土管からマリオに扮した安倍首相が出てきましたね。グラウンド上では光るフレームを使い、ダンサーたちが東京オリンピックのエンブレムを表現するダンスをして、小池都知事がオリンピックフラッグを受け取るといった流れでした。
今回、時間と予算がタイトだったため、リオに連れて行く人数も少なくしたいということで、ダンサーを50人連れて行くだけに留まったそうです。当初の案では伝統的な日本のイメージがふんだんに盛り込まれていましたが、プランを煮詰めていく中でクールジャパン戦略に沿った、モダンな東京オリンピックを描くという方向性にシフトしていったということのようです。
このセレモニーは非常に評価が高く、リオデジャネイロ側は、アースカラーを着たダンサーが何百人も出てきて歌い踊るという豪華で人間的な閉会式でしたが、東京のセレモニーが始まった瞬間にその空気感が一変しました。少ない人数の中で、非常にモダンでハイテク、そしてポップアートな世界観を展開したことで、観客からはどよめきが上がり、「おぉ、東京ってすごい、かっこいい!」という空気感がありました。ですので、東京でオリンピック・パラリンピックが行われる際には、海外の方々はあの世界観が再現されることを期待してくるはずです。日本人が盛り上がり、かつ、海外から来たお客様に満足していただける良い大会になってくれればと願っております。

PROFILE

清水太郎 │ 1969年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、シミズグループに入社。映像部門、管理部門などを経て2005年に代表取締役就任。