Psycho le Cému 結成20周年記念プロジェクト vol.1
|―活動してきた中で、どんな変化があったのか?今も変わらないものは?そして目指す未来は?
seek(Ba):結成した20年前はV系シーン自体が盛り上がっていました。Psycho le Cémuが生まれたのは、DAISHIが元々やっていた王道バンドの次に、何をやるかというところがスタートです。
DAISHI(Vo):普通にやるのはちょっと違うかなと。前のバンドで白い衣装を着るっていう狭い決め事を作ったら囚われて広がりが持てなかったので、“黒を着ない” “派手な”っていう幅の広い縛りを入れました。とにかく”一番”になれば何かが見えるんじゃないか、埋もれないようにしないと、と思って一番派手になろうと思ってやりました。
seek:色々と試していく途中段階で、俺らには向いてないかなって立ち消えになった企画もあったりしました。自然とチャレンジしてく中で選ばれていった手法が今のかたちですね。
DAISHI:MCをしない時期はきつかったよね(笑)。インストアイベントでMCがない時期!
seek:当時はV系って、どちらかというと寡黙で耽美な世界だったんですけど、僕ら根が関西人でぺちゃくちゃ喋るから、インストでかっこつけて最後までやりきれなかったんです(笑)。ある意味、そこで“もうMC解禁してええんちゃう”ってなって今の個性につながったのかもしれないですね。新しいものって受け入れられないもので、一番最初の大阪で初ライブやったときはお客さんに爆笑されたんですよ。幕があいたらいきなり踊りはじめて異質なバンドだったので、でもV系シーンで笑われることってなかったから、逆に今やろうとしてることは間違えてないのかなって思った瞬間でした。
―20年間で起きた様々な変化、SNS普及に感じること
DAISHI:SNSの普及で、音楽シーンも変わりましたよね(笑)
seek:僕ら自身がV系の作り込まれた世界の中でいうと、「手品の種明かし」的なところが得意分野なんです。見せない世界で見せてきたことが面白かったのに、SNSで自然と普段の生活が見えてしまう今の時代では、それが普通なので。インスタ映えなグループとよく言われますけど、うちのメンバーでSNS向いてる人はいないですね(笑)。うまく活用してるのはYURAサマぐらいじゃないでしょうか。
DAISHI:例えば雑誌で写真を見て、なんだこいつら?って生で見にきてもらったほうが、感動させやすい気がしますよね。Youtubeだと、一通り見て終わっちゃう、「なんだこんな感じか」って。
seek:情報として世に出て行くスピードが早いと思います。僕らの時代はアー写やポスターに載ってる人たちが、そのままステージに出てくるのが美学だったけど、いまは毎日発信してるから少しずつ毎日何かが変わってないとフォロアーさん達が満足してくれないのかなって思いますね。毎日の違いを楽しんでらっしゃる方が多くて、僕らは一つのテーマで完成させたものを見せていくから、ちょっと難しいですね。
―変わりゆく時代とグループ。その中でも変わらない基盤
seek:昔は自分たちが“埋もれない”、“売れたい”っていう欲求が強かったんですけど、今はどちらかというとこの“V系シーン自体を盛り上げていきたい”っていう思いに変わってきましたね。何歳までバンドやれるかの前に、あと10年続けるならこのV系のシーン自体が活気付いてくれないとそもそもやっていけないと思います。
DAISHI:V系っていうものが基盤にありつつも、生き残ってるバンドは外にも戦いにいってるなって思うんです。僕らは他ジャンルのアーティストともやれるのは強みかなって思うので、ちょっと出張してそこのお客さんとまたシーンを盛り上げられたらなと、みんなに還元できるような。色んなことを試しつつも、基盤はここにある、というのは変わらないですね。
seek:あと今までは楽屋で先輩がたくさんいて、一番下が自分たちで着ぐるみ着て「お前らすごいな」っていじられてたのが気がついたら我々が先輩になってて、着ぐるみきたまま先輩ブレないというか(笑)。すごくやりにくいですよ!!それを自虐ネタでいっても若いコたちは「そんなことないっす恐縮っす」みたいな空気になるから…「いやイジって!」みたいな(笑)。
DAISHI:師匠みたいにいうたらええんちゃう?(笑)「これで20年やってますんや!」っていう顔したらいいんちゃう(笑)。僕らの立ち位置って、“音楽でお金もらえて生活できる”っていう意味では、ありがたいことに一番上のピラミッドの中に入ってるんですけど、まだそこの底辺なんですよね(笑)。もっと売れてる人たちになりたかったんで。でも食べられてない人たちから見たら、すごいじゃないですかっていわれて…ちょうど難しいとこにいるなって思います。売れきってしまえば羨ましいっていわれても、「そやろな!」って言えるんですけど、「いやいや俺らも大変やで!」って(笑)。
seek:でもその欲求がある事が、バンドを続けてる理由だなって。「日本武道館でやるのが夢」ってしつこいぐらい言い続けてるんです。何度か手が届きそうなチャンスがあって、結果届かなくて。僕たち五人もスタッフも、そこに向かってることで気持ちがひとつになってるんで、目標が確かに存在してるのが大事なことだと思いますね。そんな話を、ツアー中、機材車の中でもしてて、それも20年前の景色とすごく似てるなって思いました。メンバー車は、そこそこ良いもので、椅子がちゃんとしてるんですけど、それだと距離が遠くて話しづらいんですよ。機材車だとぎゅうぎゅうで、いい歳したメンバー同士が肌くっつけあいながらの移動になるんですけど(笑)打ち合わせが捗るというか声が届くというか…。メンバー5人だけで大阪から福岡まで6、7時間かけて話ばっかりして、着いたら仕事の話終わりっていって、今度はメンバーだけで鍋を食べる(笑)。「仲えぇな!」って思いましたね。
DAISHI:中途半端じゃなくてめっちゃ仲良いバンドだからこそできる何かがしたいなって。
seek:色んなことを経てこの感じになれてるから、良いなって思う。スタッフともご飯とかよく行きますし、楽しいですよ。
DAISHI:スタッフも、メンバーと一緒のような感覚。
seek:ここのスタッフは愛が強過ぎますね(笑) 。もちろんぶつかることも多いですけどメンバーより愛が強くなりすぎてる瞬間すら感じる人もいます。
DAISHI:ある時期からメンバーだけじゃなくリハしたりするわけだから、最初は慣れなかったですけどね。
seek:僕らが0から1は作ってると思うんですけど、1から100にするスタッフのプロフェッショナルな仕事を見るのはドキドキする素晴らしい瞬間だなって思いますね。
―武道館に向かって挑戦し、攻め続けていく姿勢
seek:20周年記念ということで、20個のプロジェクトをやっているんですが、今までやってこなかったとこも含めて挑戦という一年にしたいと思っています。記念のCDも出しまして。よくマスターが捨てられてなかったなって感動しました(笑)。過去のアイテムたちを振り返ることで本当に愛されたバンドだなって感じました。
DAISHI:お客さんがいなかったら僕らほんとに活動できないんで! 周りにいる同期のバンドが根こそぎいないんで(笑)。
seek:流行り廃りとか年齢とかは超越したバンドなので、ファンも一緒に成長して年を重ねてきていますね。例えばショッピングセンターでのライブとか、今だからできる活動の幅が広がってきてます。小さいお子さんたちが振り付け一緒にやってくれてるのをみると、「あと10年俺たちが頑張れば、この子たちはライブハウスに来れるな」って思って、そういうことで夢に近づけることがあるのかな、って。
DAISHI:武道館っていうステージにいくには何か、中規模から大規模に何かをバズらせないとダメなんですけどね(笑)。何かがひっかかれば!!
seek:曲が良くないバンドは消えてるよねって話になって、僕らもどうしても見た目に行きがちなんですけど、やっぱり曲の良さっていうのが20年たってもやらせていただけてる理由なのかなって思います。これからでいうと、新譜をどれだけ今のお客さんにかっこいいと思ってもらえるかがポイントだとは思います。大事なのは20周年が終わってからだと思うので、攻めていける姿勢は作ってたい。
※2019年10月号イベントマガジンBANZAI vol.55の記事を再編集しました。