Relay Column 株式会社クリエイト大阪 長野真梧

 

コンサートを裏から支えることの素晴らしさを、今の若者にも伝えていきたい。

舞台監督というのはコンサートにおいて、大道具・照明・音響などの各セクションの統括をし、本番を円滑に開催できるよう、現場を含めその前の準備から調整を行います。そして、アーティストに合う企画案をクライアントに伝わるようアプローチをし、頂いたオーダーを実現させる仕事です。そのためにも日々多くの経験を積むことで、決められた予算内での良質なコンサートの開催が可能となり、トラブルへの適切な対応も行うことができます。

監督という立場上、決断力が重要な仕事でもあります。今の若い方は子供の頃から全てを指示されてきているが故に失敗を恐れ、自分の判断で動くことのできない方が増えています。しかし、初めから失敗をしない人間はいません。失敗をした際に切り替えて、今後どのように向き合うのかが大切ですし、そこから学ぶことも多いのです。

決断をする上で欠かすことができないのは、コミュニケーション力。人との繋がりを持つことです。仲の良いスタッフ同士であれば話をしやすいので、上手く物事が進められます。家族よりも長い時間、コンサートのスタッフと共に過ごすことが多いので、「一緒にやろうぜ ! 」という雰囲気を私たちが率先して作り、周囲との繋がりを大切にすることで、素晴らしいコンサートが開催できるのです。

嬉しいことに、仕事は年々増加していますが、反面、我々のような裏方を目指す人は減少傾向です。この要因として考えられるのは、業界全体として「大変・つらい・帰れない」というマイナスイメージがあることと、インターネットが普及したことでコンサート映像を気軽に鑑賞できるようになり、コンサートの裏側への興味が薄れていること。もう一つに表舞台を目指す人が増えていることが関係していると思います。この問題を解決するためには、労働環境を整えること、そして根本的に音楽・コンサートが好きな人を増やすことにポイントがあると考えています。

コンサートの醍醐味は、アーティストの生歌・汗を全身で感じられ、周りのお客様と共感し合いながら観覧できるところにあると思います。私は音楽が好きでこの仕事を行っているため、素敵なアーティストと仕事をすると心から感動し、笑顔で楽しんでいるお客様を見た時には嬉しい気持ちになります。そういった喜びを与えてくれるものが、コンサートの裏方の仕事という認識です。

コンサートが増えたとしてもスタッフが不足していると開催自体が難しくなります。事故を起こさぬように仕事の分量を念密に考え、調節しなければならないのです。今では高度なセッティングが増え、各分野においてある程度の技術や知識が必要となっています。そのためスタッフ同士、必要以上に話し合いをしなければなりません。この窮地を突破するため、そして未来のために、コンサートを裏方から支える魅力を真剣に教えられる環境を作り、若い人を育てることに力を注ぐ時代がきたと思います。

 

PROFILE

株式会社クリエイト大阪の代表取締役。舞台監督として浜田省吾や五木ひろしなど、数々のアーティストのコンサートを長年担当。1990年から現在まで矢沢永吉を手掛けると共に、若手舞台監督の育成にも積極的に取り組んでいる。